挙げ句の果て

いざ、恥じめやも。

2020年06月

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朝帰り。自分の部屋に帰って来てうんこする。ああ、漏らさずに済んだ。トイレから出てシャツとズボンを脱ぐ。鏡をみる。筋トレしてるだけあって、ちょっと陰影が出るようなこの部屋だとかなりいい体に見える。だのに、あの蛍光灯の明るい沢井の家で、酔って服を脱いだ時には、この筋肉が全く嘘ように、だらしのない体に見えた。やはり照明の力は重要のようである。ああ、まだ酔っている。カップラーメン、いや、カップ汁なし坦々麺を食べてから寝よう。これは3分かな5分かな、ああ5分か。かやくとタレを取り出して、と。それにしても、なんでかやくはかやくと言うのだろう。火薬でもあるまいし。いやいや、ググらないぞこんなことは、こんな事をググっていては時間がいくらあっても足りない。もう5分たったかな。いやまだか。ええいもういい。そもそも5分は目安で、待ちたいだけ待つのが本当だ。蓋の上で温めておいた液体調味料を取って、このどちらからでもお開け頂けますと。僕は、いつものように、この袋の角だけが開くように斜めに開ける。袋の上の辺を平行に千切ってガバっとだらしなく開けてしまうと、どうも中身を全て出しにくいようだ。しかし、この袋の材質は本当に素晴らしい。プラスチックの可能性を十分に良く生かして、世の中にそのアビリティを知らしめている。万歳プラスチック。どれどれ、後入れのふりかけも袋の角だけ千切ろう。びり。ああ気持ちいい。さあ混ぜ混ぜしよう、んん、いい匂いだ。いただきます、あっ、ちくしょう!パソコンに汁が飛び散った。あんまり混ぜすぎると麺が絡まりすぎて予期出来ない動きをしていけない。気をつけながら、もぐもぐ。ああ美味しい。なんでこんなに美味しいんだろう。やっぱり人工調味料かしら。人工調味料万歳。ああ美味しかった。ちなみにこれは何カロリーかな?ええ!700kcal!!??おいおい、そんなに量あったかよこれ。でも美味しかった。機会があれば、またこれを買ってこよう。

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朝4時半頃目が覚める。いつも通り、ソファで寝ていた。ゆきよが隣の部屋からこちらの部屋に入ってくる。僕のことを起こさないように、ゆっくりと、足音を立てないように入ってくる。僕も、彼女のその努力に報いるように、寝たふりを続ける。パシャっと、ケータイで写真を撮る音がする。僕の寝ている姿が面白いらしい。そう言えば、僕は巨大な等身大クマのぬいぐるみを枕にして、腕を組んで、膝から下をソファの肘掛のうえに投げうって寝ている。確かに、寝相としては面白い格好をしているかも知れない。僕は聞き耳を立てる。彼女はコップに水を注いで、それを飲み干した。そして、また忍び足で部屋を出て行き、玄関へ行って、そっとドアを開けて沢井の家を出たようだ。ゆきよが先に帰るなんて意外だなぁ、と思う。僕はゆっくり目を開ける。テーブルには昨夜から飲み食い散らかされた残骸や人狼ゲームのカードがそのまま残されている。ゆきよがこういう残骸を片付けないで帰ってしまうのも珍しいなあ、と思う。片付けないで帰るのが気まずいから、僕のことを起こさないようにしていたのかなあ、とも思うが、それに関して特別ゆきよに不快感を抱くわけでない。僕はいつだって片付けなんてしないでササッと帰ってしまうのだから。

時計を見る。もうすぐ5時だから、電車は全然ある。帰りたい気もするが、二日酔いで気持ち悪いし、まだ少し眠い。かと言って再び眠りにつく事もできず、帰る決心もつかないで、ソファの上に横たわったままいつまでも愚図々々している。すると、玄関のドアが開く音がして、部屋にゆきよが入ってくる。僕は寝たふりはせずに、おお、とゆきよに声をかける。どうやら、ただコンビニに行って飲み物を買って来ただけのようだ。彼女は僕に飲むヨーグルトをくれた。そして、ソファの隣に座ってネットフリックスで韓国ドラマを見始める。僕も、なんとなくそれを見るが、退屈なのでテーブルの上の片付けを始める。片付け終わったので帰ろうとすると、ゆきよが僕に、ドラマはあと少しで終わるから最後まで見ていけ、と言う。僕はソファに腰を降ろして、ドラマを最後まで見る。ドラマが終わり、僕が帰ろうとすると、ゆきよは、もう少しだけここに居ろと言う。僕はそれには従わずに、ゆきよさんお疲れ様でした、と言って沢井の家を後にした。

外は薄曇りで、気温は21,2度くらいの快適な温度だ。朝の空気が心地良い。急に、ゴーン、と鐘の音がする。ケータイを見ると、丁度6時だ。なるほど浅草寺では6時に鐘を撞くのだなあ、と思っていると、僕の横を通り過ぎた60代くらいの夫婦の奥さんの方が、鐘の音が聞こえた方へクルッと振り向いて、顔の前に両手を合わせて礼をした。なるほど鐘が鳴ったらこうやって拝むのだなあ、と思っていると、またゴーンと鐘が鳴る。20秒くらいして、またゴーンと鳴る。何回鳴るのだろうか。6時だから、6回鳴るのだろうか。いずれにせよ、何回鳴らすのか突き止めたい。4回、5回、6回鳴った。そして、駅前の信号に差し掛かったところで7回目が聞こえる。それにしても、よく響く鐘だ。信号の向かい側から歩いて来た朝帰り風の学生4人が、範馬勇次郎とビスケット・オリバに関して何か話をしていた。派手なTシャツを着たおじさんが富士そばに入ったところで8回目の鐘が鳴る。9回目の鐘が聞こえたところで、僕は地下鉄の階段を降りた。鐘は、結局何回鳴ったのだろうか。

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